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少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

少年文庫 №6 魔法のカクテル       (終わりよければすべてよし)

少年文庫

魔法のカクテル 著者ミッヒャエル・エンデ 訳者 川西芙沙 1992年6月刊 岩波書店

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 「モモ」で有名なミヒャエル・エンデの晩年の作品です。「モモ」同様、風刺のきいたお話ですが、よりユーモラスに仕上げているなと感じました。風刺の対象は「お金の奴隷となった科学技術と人間社会」です。

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 まずお金の奴隷となった科学技術の象徴と思われるイルヴィツアーという魔術師が登場します。彼は地獄の魔王から「10種類の動物を絶滅させる」「国の気候を操作して四季を乱し日照りか洪水を起こす」など5つのよくないことを実行するよう宿題を課されていますが、まだ半分しか実行できていません。

地獄の魔王の使者マーデが督促にやってきてイルヴィツアーは大慌てです。今日は大晦日の午後5時すぎ、もう時間がないのです。

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 そこに伯母のティラニアがやってきます。金の亡者なので、こちらが金融資本家の象徴でしょう。魔法のカクテルのつくり方を書いた説明書の残り半分が、イルヴィツアーの家にあるので、これを金で買い取ろうとやって来たのです。

実は魔法のカクテルは凄い力があって、指示通りの方法でカクテルを作り、願いの言葉を唱えると確実に願いが実現するというのです。

イルヴィツアーは、魔王の約束を一気に果たすチャンスと考えました。あわよくば伯母が持っている半分の説明書を奪って自分のものにしようと画策します。もしこれが果たされれば、地球は大変なことになってしまいます。

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 この魔術師たちは、それぞれマウロ(猫)とヤーコブ(烏)というペットを飼っていました。実はこの動物たちは、「動物最高評議会」から送り込まれたスパイなのです。魔術師の好き放題の仕業に危機感を抱いた評議会は、魔術師の動向を探っていたのです。

しかしマウロもヤーコブもどうも頼りない。マウロなどはイルヴィツアーが大切にしてくれるので感謝してスパイであることを自分の口から話してしまう始末です。またヤーコブの方も芝居が下手でスパイということが伯母にばれっちゃっています。

こんなドジ達ですがさすがに魔法のカクテルの話を聞き魔術師の本性を知ると、この企みを阻止しようと家を飛び出します。地球の運命はこのドジ達にかかっています。さてマウロとヤーコブは地球を救えるのでしょうか・・・・

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 エンデは会話の達人ですね。だからこの物語は舞台で演じられると最高だと思います。物語は実質大晦日の午後5時から12時までの7時間。場所はイルヴィツアーの家が殆どで、あとは教会の付近の2か所。役者も6人で済みます。会話自体の面白味が勝負の物語ですから、これも舞台向きだと思います。自分の好みの役者を振り当てて読んで見るのも楽しいかと思います。

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 魔法のカクテルの呪文は、実は言ったことと逆のことが実現するのです。

だから魔術師はこんなふうに言います。

 カクテルの中のカクテルよ。わたしの願いをかなえておくれ。

 危険なものからできるエネルギー。やめてほしいエネルギー。ゲップ。

 風と太陽 つかいましょ。風と太陽 力のもとよ。

そうすると逆に危険なエネルギーがやってくるのです。

これなど原発社会の危うさを、この物語を通して読者に伝えていると思えます。

絶滅動物の保護などを意図した呪文も読まれます。

 

エンデは児童作家という範疇をこえた作家です。

私は嫌な老人にはなりたくないので、今後もエンデを読み続けようと思います。