少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

作文はまず観察から(井上ひさしの作文教室より)

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫) 

  編者 井上ひさしほか文学の蔵 2004年1月刊 新潮社

 

   前回のブログでSF作家の博学ぶりについて述べましたが、井上ひさし氏の博学ぶりも半端じゃありません。それに何といっても眼のつけどころが鋭いし、ユーモアがある。熱烈な井上信者がいるのもうなずけます。本書は、1996年11月に岩手県一関市で開かれた「作文教室」の講義を書籍化したものです。なるほどと思ったことを列挙してみます。 

作文の秘訣を一言でいえば、自分にしか書けないことを、誰にでもわかりやすい文章で書くこと

この「自分しか書けない」というのが実に難しいのです。まずは自分の体験や自分が大切にしてる点を明確に打ち出すことから始めたいと思います。                                                  

題名をつけるということで3分の1以上は書いたということになる

 題名は安易につけてはいけないけれど、奇をてらったのも駄目ですね。本文の中心核をシャープに表現することを心がけます。

段落とは簡単に言うと、あるひとつの考え方のひとまとまりである

適切な段落わけがされていると、起承転結がよりわかりやすく伝わると思います。

いきなり核心から入ることが大事なんです。

文末にポイントがある日本語だからこそ、もったいぶらず、ずばっと一番伝えたいことを最初に書く。その方が読者も安心してその後の読めますし、理解もしやすいでしょう。

あまり主語を立てると、日本文の場合、ごつごつした感じになります

これも日本語の特長(話し言葉では特に)ですね.主語を立てなくても、前後の文章で主語が推定できるような工夫も必要ですね。ちなみに自分を指す人称代名詞も、ほとんどの場合全部、削ったほうがいいとのことです。

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 本書は、このような技術論だけでなく、日本語の特長や、国語教育・思想にまで話が広がっています。これこそが井上ひさし流といえます。例えば日本語には1人称や2人称についてはおびただしい数の語彙の人称代名詞があるのに、3人称のそれは殆どない。これは我々の祖先は3人称を必要としていなかったのではないかと井上氏は推論しています。あるカテゴリーの語彙の数は、使い手の関心の強さと比例することは確か(例えば日本では雨を表現する語彙が大変多い)。身内意識の強い日本人は1人称・2人称は、様々な状況に応じて使い分けをしているのに比べ、外にいると感じる者には、彼・彼女ですませるのかもしれません。

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 あと興味深かったのは、子どもの国語教育は、感想や意見を無理に書かせるのではなく、観察する・要約する・報告する,そういう文章をうんと書かせることが大切だと指摘している点です。これはうなずけますね。新聞記者の文章が上手なのは、じっくり事実をみつめ、それを限られた字数で要約し記事にする作業を繰り返しているからだと思います。まず良い文章を書こうとするなら、しっかり観察することから始めること。これに尽きると思いました。