少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

名作鑑賞 老年について(キケロ)

老年について (岩波文庫)   著者 キケロ 訳者 中務哲郎 2007年10月刊 岩波書店 

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 古代ギリシャの時代から、老年をどう生きるかは哲学的にも大きな問題でした。また老年に対するスタンスも楽観派・悲観派にわかれていたようです。悲観派の筆頭格はソクラテス

 もし私がこれ以上長く生きているならば、否が応でも老年のつけを払わなくてはならないだろう。目や耳が衰え考えも鈍りもの覚えはますます遅く、物忘れは速くなって以前は勝っていた人に負けるようになった。

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 そして楽観派が、キケロが描く大カトー(農民出身の政治家・文人)です。どうしてそんなに老年を苦にしないのかと尋ねる弟子達に対して、カトーは老人が惨めとされる理由を4点あげたうえで、一点ずつ反論していきます。

①公の活動から遠ざかされる

若者への助言や次の世代に役立つような木を植えるといった精神で果たせる老人向きの仕事はいくらでもある

②肉体が弱くなる

そもそも老年の仕事は体力を要求されず、体力に応じてできることをやればよい。

③殆ど全ての快楽を奪い去る

快楽ほど自然が人間に与える病毒はない。この病毒を奪い去ってくれるのが老年である。それに老年には研究や学問をしたり農事の中で自然と暮らすという楽しみがある。

④死が遠く離れていない。

魂が永遠にあり続ける所に導いてくれるのだから、待ち望みさえすべきだ。死という自然の法則に従って必ず起こることは全てよきことに数えられる。老年の最後の仕事が終われば人生に満ち足りて死を迎えることができる。

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 いかがですか。ものは考え方次第ということなのかも知れません。私は老年の良し悪しより、老年を迎える以上、その特性をいかして楽しむしかないと思っています。身体や記憶力・判断力が衰えないように心がけながらも、多少の低下レベルであれば、開き直ってしまって逆に衰えを笑ってしまうのもありかなと。あと「学問研究」と「農事」を老年の楽しみとするという大カトーの考えには、100%同意します。まさにそれが私の老年のキーワードですので。

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 著者のキケロは本書を60歳すぎに書きました。その頃のキケロの身辺はあわただしく、大カトーのようなどっしりとした老人観をもつまでには至らなかったようです。84歳にしても老年を苦にしない大カトーキケロにとって理想の姿だったのです。キケロのみならず、ソクラテスアリストテレスら偉大な哲人も老年をよく生きることは困難だったようなので、凡人の私もせいぜいじたばたしながら、晴耕雨読を心がけできる限り穏やかに、そして少しわくわくと老年をすごすようにいたします。