少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

名作鑑賞 北原白秋童謡詩歌集        赤い鳥小鳥

北原白秋童謡詩歌集 赤い鳥小鳥 (美しい日本の詩歌) 

著者 北原白秋 編者 北川幸比古/一乗清明 1997年6月刊 岩崎書店

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   前回 白秋期について触れましたが、この白秋という言葉をペンネームにしたのが北原白秋です。白秋と言えば、やはり童謡詩歌ということになりますね。「この道」「ペチカ」「赤い鳥小鳥」などが有名ですが、個人的には[五十音」が好きです。「あめんぼ あかいな アイウエオ うきよに こえびも およいでる」から始まり「わいわい わっしょい ワヰウエヲ うえきや いどがえ おまつりだ」で終わる言葉遊びの詩で、何といってもリズムがよく生命の躍動が感じられる点が大好きです。

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それともうひとつ大好きな詩がこれ。

 薔薇ノ木二薔薇ノ花サク  ナニゴトノ不思議ナケレド

 たったこれだけの詩なんですけど、何かどきっとしませんか。タネをまく。花が咲く。あたりまえといえばあたりまえだけど、なぜこんな粒から芽が出て葉をつけ花が咲くのか。よく考えるとすごくないですか.平均的な人の身体は何と60兆個の細胞によって形づくられ、日々すごい数の細胞が死にほぼそれだけの細胞が生まれているという。これすごくないですか。

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 国木田独歩の「牛肉と馬鈴薯」という小説の中で、男たちが集まって各人の願いを語りあうシーンがあります。ある者は牛肉的な実利的な願いを語り、ある者は馬鈴薯的な清貧な願いを語りますが、岡本という男の願いはいづれの観点とも異なるようで、もったいぶったあげくこんなことを言います。

 「言いましょう、吃驚しちゃいけませんぞ」

 「はやく はやく!」

 岡本は静かに「吃驚したいというのが僕の願いなんです」

 「なんだ馬鹿馬鹿しい!」「何のこった!」「落語か!」

        中 略

「宇宙の不思議を知りたいのではない 不思議なる宇宙を驚きたいという願いです」

この後、ああだこうだとやりとりがありますが、どうも議論がかみあわず最後に岡本はこういいます。

「ああくたびれた。しかし最後に一言しますがね 僕は人間を二種に区別したい。曰く驚く人 曰く平気な人」

 もちろん白秋が驚く人なのは、薔薇の詩で明らかです。

さて人は歳をとればとるほど驚かなくなると言われていますがはたしてそうでしょうか。ある歳を超えると逆に今までは当然と見過ごしていたものに驚くようになる気がしてなりません。人生の晩年の味わいはそこにあるような気がします。