少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

名作鑑賞 あひたきひと(室生犀星)

 

あひたいひとはないか   あひたいひとはない

ほめたいひとはないか   ほめたいことだらけだ

にくみたいひとはないか  そんなひとは一人もない

かねはほしくないか    家族を生かすだけいる

ほしいものがあるか    もうない

死ぬことはいやだらう   あるときはいやだがあるときはいやでもない

もう一度いふがあひたいひとはないか 

めんどうくさい あひたいひとはない そんなもの世界に一人もない。  

                      室生犀星詩集ー室生犀星自選より 岩波文庫

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 この詩は室生犀星が50代後半のときによんだ晩年の詩です正直この詩を読んで作者の本音がどこにあるのかは今でもわかりません。あいたい人はいないというが、タイトルは「あひたき人」とある。本当はあいたい人はいるのではないか、そうも思えるのです。ただ、晩年であれば、自分も若い時のような溌剌さを失っている、その姿を本当は会いたいひとに見られたくはないという気持ちがあるのではないか。また逆に会いたい人が、昔のような輝きを失っているかもしれない。その姿をみるのが恐ろしい、だから会いたくないのかもしれない。そうも思えます。

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 「抒情小曲集」「愛の詩集」に代表される犀星の詩に私は貧しくも気高く生きる人達を讃美する高い理想主義を感じていました。でもこの詩はちょっと違います。この詩は晩年ならではの、すでに人生にくぎりをつけ諦感した犀星を感じます。この詩は私を感動させるものではありません。ただ何か気にかかる 無視することはできない。この詩を編んだ時の犀星のように、晩年をむかえようとしている自分の胸を波立たせるものがある そう感じます。新たな犀星像を知ってよかったと今は感じています。