少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

話す聞く術                         (稲垣忠彦 日本語を学びなおすから)

日本語を学びなおす―「バカヤロー」から「天声人語」まで【使用教材】日本語を学びなおす 著者 稲垣忠彦 杉本真理子 2004年刊  評論社

   私は大学在学時 教職の必修科目を履修していました。その時すごく不思議だったのが授業が、教育心理や原理などの知識の習得だけで、よい授業を行うためのスキルを学ぶ講義が全くなかったことでした。教師というのは授業を通して生徒に知識を伝えるので、本来は少なくとも話すプロでなくてはならないと思うのですが、話すことを中心としたコミュニケ―ションの基本的なスキルを学ばないまま教育実習をしました。

             ♡    ♡    ♡    ♡    ♡

   本書は、将来小学生の教師を目指す学生対象の国語概論の授業をライブ的にまとめたものですが、大変興味深い内容でした。教師志望の大学生が人前でろくに話ができないことにショックを受けた著者が授業を担当し、関連知識やスキルを講義しますが、その授業自体が小学校での授業を意識したものになっています。(実際、本書に登場する大学生は授業が始まっても私語をやめなかったり、あてられてももじもじと答える人もいて小学生のようです)

           ♢   ♢   ♢   ♢   ♢

 稲垣教授が目指すのは、生徒の発話を中心とした生徒主体の授業の実現です。授業は「国語科の目的と歴史」「話すこと聞くこと」「言葉に敏感になる」「日本の文字」「文の構造」という構成で展開されています。具体的な授業例をいくつか挙げると

二人一組になって相手の悪口を言い合う詩を読ませる。相手をみないで詩を読む生徒に、きっちり相手をみて読むように指摘し、コミュニケーションは相手をしっかり見て行う重要性を示唆する。

谷川俊太郎の「きりなしうた」を読ませた後、実際のきりなしうたを読む小学生の授業のビデオを見せて、感想や自分たちの発話との違いを述べさせる。(小学生には恥ずかしさがなくリズムがある。リズムがあるというのは本気でやっているから  ということを教授は示唆する)

小学生時代に教師から褒められた体験を話させる。教授の頭に学生の手をのせて褒めるように促す。(教授はこの授業でも学生の回答を頭から否定せず、その回答を尊重し認めつつ議論を発展させる)

漢字・カタカナ・ひらがなを講義した上で日本語の特徴や利点・不利な点を述べさせる

漢字の種類(象形・形成・会意等)や成り立ちを講義した上で自分の名前の漢字の説明をさせる。

学校から自分の家までの経路を、はじめて聞く人でもわかるように説明させる。

大野晋の「日本語練習帳」をもとによく似た言葉の微妙な違いを答えさせる(例:最善と最良)

天声人語(780字)を使って、文の構成からの区切りをいれさせる。その上で李白杜甫漢詩をつかって起承転結という文の基本構造を講義し、あらためて文に区切りをいれさせる。

新聞のコラムを3つあげ、いずれかを選択させ文章の要約(200字)とタイトルをつけさせる

           ♤   ♤   ♤   ♤   ♤

  上記内容でもわかるように授業が一方通行ではなく、学生側の発話をうながし教師と学生の双方向による授業が展開されます。またすべてが具体的・実践的なのでこの授業を受けた学生は、立場を変えてこどもたちに教える側にたった時に今回の授業で学んだことを、すぐ応用できると思います。私は将来日本語を外国人に教えるという目標をもっているのですが、本書で学んだことはかなり活用できるのではないかと思っています。日本語の造語力の強さをふまえ、日本語の豊かな表現力を自らも学び伝えていきたいと思っています。