少年シニア 55歳から味わう国語

50半ばから人生を味わうために国語力アップを目指す記録・顛末

少年文庫№1 ロビンソン漂流記   (デフォー)

ロビンソン漂流記 (新潮文庫)【著者】ダニエル・デフォー【訳者】吉田健一   1951年6月4日刊 新潮社

 この話のキーワードは「孤独対応力」「生きる力」「突破力」というところでしょうか。ムム これ全てシニア世代の課題ではないですかね。こどもの頃読んだときは、ただ単に「無人島を舞台にした漂流記」と思って単純にワクワクしながら読んだ記憶があるのですが、55歳をすぎて改めて読み直すと、つい今後の人生と絡ませて、自分がクルーソの立場だったらどうするだろう的に読んでしまいました。で改めて思ったのは、この小説はシニア世代に今一度読んでおくべき傑作だということでした。

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 主人公のクルーソは、冒険家ではありますが、鋼のような強い意志をもった男ではありません。冒険をしては後悔し、そのくせ性懲りもなくまた冒険に出かけるという具合です。島で困難が起こるごとに弱音をもらし、神にすがります。しかし、その一方で、本人もいうように「一度計画したことはあきらめない」という持続力や、「現状を正確に把握しよう」とする分析力をもっています。漂着後のクルーソは動揺しながらも実に具体的に行動しますし、リスクマネジメントもおこないますし、様々なことを想定して計画的に動きます。また自暴自棄にならぬようセルフコントロールまがいのことも行います。

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 彼は住居をつくりました(それも本宅と別荘を)。土器をつくりました。傘もつくりました。麦をまきパンをつくりました。オウムを友とし犬を従者にし、ヤギを家畜化しました。そして遂にこの島にやってきた蛮人に殺されようとした男を助けて、言葉や生きるための技術を教え込み家来にしました。そうです。彼はその才覚と実行力で自分の王国を打ち立てたのです。クルーソはある意味、孤独ではありませんでした。こうして実に27年間の長きにわたってこの島の王として君臨したのです。社会の枠組みの中で定められたドグマに依存しがちな現代人と比べて、クルーソの主体的な生き方は、私の心を強く揺さぶりました。

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 著者のデフォーは、政治活動によってさらし台にたつという経験もある反骨精神に富むジャーナリストでしたが、ロビンソン漂流記を執筆したのは、何と59歳のときでした。人生の最終章を迎え、何が彼にこの本を書かせたのでしょうか。安定した人生に満足する人間への警告でしょうか。逆境時に陥った時の人間の底力を伝えたかったのでしょうか、はたまた神の慈愛の深さを教えたかったのでしょうか。私自身思ったことは、どんな人生であれ誰しもが生まれた瞬間に、初めての生という体験を通じて世界を漂流する運命を宿命づけられているということでした。未知な世界への不安はつきまとうのですが、クルーソのように、怯えながらも、柔軟に、かつ具体的に動いて、少しでも自分の求める姿に近づくよう努力していく、それが大切なのだということをデフォーは伝えたかったのではないでしょうか。

人生の残り時間が少なくなった今こそクルーソのような姿勢と行動が55歳の私にも求められてている。そう受け止めてこの本を閉じました。